2007 年 12 巻 1 号 p. 18-23
活動において、人々は事前の「プラン」よりもむしろ、その状況に埋め込まれた情報を有効に活用しているという主張がある。筆者らはその視点から、活動を遂行する人々のために、自作の周辺環境を形成し、現場で所与の環境情報とともに利用するためのツールを考案した。このデザインの特徴は、日常の体験を記録してその場を楽しみ、またそれら記録を参照することで自らの活動を行い新たな体験を得ること、生成的で構成的な点にある。そこでは、事前に計画を立てその目的達成の支援をデザインの目標としていない。本稿ではそのデザインの成果物と、検討過程について報告する。またそれらのデザインの開発方法として筆者らが実践している「参加型デザイン・ワークショップ」と呼ぶ方法を紹介する。最後に、サッチマンの「状況的行為(Situated Action)」に示されている「周辺環境(circumstances)」を拡張した、「第二次周辺環境」というこのツールデザインのコンセプトについて考察する。