デザイン学研究作品集
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  • 佐藤 弘喜
    2023 年 29 巻 1 号 p. 1_2-1_5
    発行日: 2024/07/31
    公開日: 2024/11/07
    ジャーナル 認証あり

    災害時の停電に対応する非常用発電設備には、燃料の備蓄が必要である。施設利用者に親しみやすく、かつ省スペースな燃料備蓄タンクを開発することがデザインの目的であった。現地調査を行い、燃料タンクの設置状況を確認した。調査結果に基づきアイデアの検討を行い、基本デザイン案を決定した。その後、試作品の製作によって細部の仕様を検討した。親しみやすさと未来感を両立したデザイン表現を目指した。最終案が決定した後、耐震やタンク内温度などの実証実験を行った。製品の特徴として、二重構造としたことで設置スペースが小さいこと、設置が容易であること、耐久性が高いことなどがある。2021年6月に全国販売を開始した。

  • 小西 哲哉, 橋爪 良博, 窪田 恭子, 伊藤 達也, 河島 則天
    2023 年 29 巻 1 号 p. 1_6-1_11
    発行日: 2024/07/31
    公開日: 2024/11/07
    ジャーナル 認証あり

    歩行障害をもつこどもに立ち、歩く機会を提供することは、発育・発達を促す上で非常に重要である。従来の長下肢装具は価格、重量、着脱の煩雑さに加え、こどもの成長に合わせた細やかなサイズ調整などが難しいなどの課題がある。本稿で紹介するプロジェクトは、従来の長下肢装具の課題を解決したこども用歩行装具の製品実用化を実現するものである。我々が開発する装具は、対象児の成長に合わせたサイズ調整を可能とし、ワイヤ駆動機構による股関節の交互屈曲伸展動作を用いて歩きやすさを高め、安定立位保持を可能とするために従来装具の形状・構造に変更を加える。必要とされる数量を適量生産する設計を実現するための構成要素の簡素化をベースとしたシンプルで機能的な装具全体の構造設計と着けてみたいと思わせる外観デザイン、製造技術や素材の選定を通して重量と製造コストの削減を実現し、医療現場への実装、ユーザーへの安価提供を実現することを目指した。

  • 宮崎 愛弓, 井手 美由樹, 青木 友希, 塚原 亜希子, 長尾 徹
    2023 年 29 巻 1 号 p. 1_12-1_17
    発行日: 2024/07/31
    公開日: 2024/11/07
    ジャーナル 認証あり

    少子高齢化、首都圏への人口集中が問題視される近年、地方創生や地方の活性化といった課題が重要視されている。過疎化が進む市町村では対策を求められているが、各自治体が手探りで対策を行っているのが現状である。長野県東筑摩郡麻績村では商工会を主体として事業者向けのブランディング推進活動を行った。
    地域住民がブランディングを学ぶ活動を通して、地域住民自身、事業者、村としてのブランディングに対する知見を高め、新しいコミュニティとして地域活性化イベント「麻績メッセ」開催に至った。活動の中でブランディングの基礎知識やデザイン思考の講義、麻績村の価値発見ワークなどを通し、麻績村の村民自身がブランディングについて考えるきっかけを設けた。本研究では、4年間にわたるデザイナー以外の方へのデザインの考え方の啓蒙を通したブランディング推進活動について、フローや効果を整理した。

  • −FINA世界水泳2023大会を事例として−
    工藤 真生, 伊原 久裕, 須長 正治, 尾方 義人, 久米 聖伍, 疋田 睦, 鈴木 千畝, 金子 千聖, 星野 純平
    2023 年 29 巻 1 号 p. 1_18-1_23
    発行日: 2024/07/31
    公開日: 2024/11/07
    ジャーナル 認証あり

    本作品の目的は、世界水泳選手権2023福岡大会・世界マスターズ水泳選手権2023九州大会での会場ピクトグラムとサインのデザインプロセスを通して、ジェンダーや障害などの社会包摂のためのピクトグラムとサインのデザイン方法を提案し、それに基づいたデザインを考察することである。ジェンダーに関しては、ジェンダーバイアスを排除したニュートラルな人型ピクトグラム、障害に関しては、知的障害や自閉スペクトラム症当事者の理解度を向上させるピクトグラムとサインを作成した。更に作成したデザインに対し、障害の有無に関わらず計281名を対象に理解度調査を実施し、結果を踏まえて最終的なデザインの調整を行った。これらを元に、JIS案内用図記号(以下JIS)9項目の改変を含む33項目の新しいピクトグラムとそのデザインマニュアル、サインデザインガイドラインを提案した。

  • 河合 慎介, 岸 研一
    2023 年 29 巻 1 号 p. 1_24-1_29
    発行日: 2024/07/31
    公開日: 2024/11/07
    ジャーナル 認証あり

    伊藤メンタルクリニックは津市(imc津、2007)から神戸市(imc神戸、2022)への移転で、同一発注者となる。当時から将来の移転を見据えており、計画・設計・施工後も使用後評価や精神科クリニックとしての治療空間のあり方について、継続的に対話を繰り返した。そして、その約16年間に渡る対話から得られた知見を踏まえてimc神戸の計画・設計を行った。治療空間は、プライバシーへの配慮、落ち着き、安心感、患者のためのしつらえをコンセプトとして計画した。ワンウェイ動線とコンパートメント待合席はプライバシーへの配慮に効果があるが、ウィズコロナ時代には感染管理にも効果があった。

  • 才川 拓馬, 金 尚泰
    2023 年 29 巻 1 号 p. 1_30-1_35
    発行日: 2024/07/31
    公開日: 2024/11/07
    ジャーナル 認証あり

    2020年代初頭のCOVID-19の流行に伴い、ペットへの需要が増加している。それに応じて、高い飼育のハードルを解消するためのAIやロボット技術を利用した代替ペットが注目されている。しかしこれらのコンパニオンは、プログラムやアルゴリズムに基づいて動作するため、生命感の再現が困難である。本研究では、この生命感を人工生命の動作に取り入れ、新たなコンパニオンとしての可能性を広げるため、4足動物が前脚と対角の後脚を同時に動かすトロット歩容を基にした強化学習の報酬設計を新たに提案する。伝統的な報酬設計で学習したモデルと比較し、観察者の印象の違いを通じて、新しい報酬設計の効果を評価した。結果として、提案した報酬設計は人工生命の動きの生命感を強化する上で有効であることが確認された。また、生命感は単一の要因だけでなく、複数の要素が複雑に影響しあうことも明らかとなった。

  • 宮地 英和
    2023 年 29 巻 1 号 p. 1_36-1_39
    発行日: 2024/07/31
    公開日: 2024/11/07
    ジャーナル 認証あり

    本研究では、地域創生を目的とした課題解決型のプロジェクトとして、幟旗メーカーの技術を活かした商品開発を行なった。商品開発では、若者の感性や発想から幟旗用の生地を用いたブックカバーを考案した。地域の文化や歴史、観光に関する魅力について発信するブックカバーとして、「お好み焼き」「石垣」「神楽面」「牡蠣」「錦鯉」「広島弁」のイメージを使用し、インターネットや書店で販売した(図1)。本研究の趣旨は、産学連携による商品開発と流通のプロセスを通して、企業のイノベーション創出と地域の社会や産業に貢献する人材育成の促進を図ることである。

  • 原田 桃実, 石田 莉菜, 北沢 真理愛, 今泉 博子, 原 寛道
    2023 年 29 巻 1 号 p. 1_40-1_45
    発行日: 2024/07/31
    公開日: 2024/11/07
    ジャーナル 認証あり

    近年の都市公園においては、安全確保による遊具の制約が行われ、子どもが屋外で自由にあそぶことができる環境が失われている。そこで私たちはこれまでに、地域住民の要望に合わせて公園にあそび場を展開できる移動式遊具の開発を行ってきた。本遊具では、遊具のパーツ移動や組合せが多様になるよう嵌合による組合せに着目した。凹凸形状に嵌合する組合せ方法は、子どもたちに分かりやすく創造性をもってつなげていく様子が多く見られた。試作検証を繰り返し、最終的に子どもが理想的にあそぶ様子が確認できた。検証結果に基づき、製品化のため安全性・材質・製造方法等を考慮した設計を行い、「固定されていない」という新しい価値をもつ遊具「MOPPS」が実現した。利用検証では、目指していたあそび状況や避けるべき危険度合いが高い状況を確認できた。日常的な活用方法や持続的なあそびの発展については、長期的に調査し移動式遊具の実用価値を高めたい。

  • 大学教職員が広報の主体になれるコミュニケーションの道具づくり
    横溝 賢, 若林 尚樹, 伊東 健太郎, 川上 修平
    2023 年 29 巻 1 号 p. 1_46-1_51
    発行日: 2024/07/31
    公開日: 2024/11/07
    ジャーナル 認証あり
    電子付録

    近年多くの大学がWEBサイトリニューアルに取り組んでいる。その背景には、長年の運用によってもつれたサイト階層を整理することや、マルチディバイスに適応したインターフェースデザインへの更新等があるが、本質的な必要性は、社会や環境の持続可能性問題へのリテラシーが高まり、大学に対する見かたや期待が変わりつつあることへの適応があると考える。そこで問われているのは、ユーザの問題を発見して解決するデザインではなく、「私(大学)は何者か」という社会における大学の存在意義をステークホルダに伝えるためのデザインである。このように考えた筆者らは、札幌市立大学のWEBリニューアル事業において、「私(大学)は何者か」を問い直すことからはじめた。その取り組みは、高校生からみた私(大学)の組織体制の特徴を知り、大学構成員の社会的な活動を知り、一連の活動を支える研究者の思想を知るという、私(大学)という〈人となり〉の情報を構造的に視覚化するアプローチであった(図1)。本稿では一連のデザインプロセスを省察することから「私は何者か」を問い直すデザインがもたらす影響や可能性を呈示する。

  • 小早川 真衣子, 須永 剛司, 岡村 綾華, 伊集院 幸輝, 岩岡 敦, 西村 拓一
    2023 年 29 巻 1 号 p. 1_52-1_57
    発行日: 2024/07/31
    公開日: 2024/11/07
    ジャーナル 認証あり

    近年、業務品質向上を目指し、当該業務の認知的側面としての作業知識を内蔵したAIシステムの研究開発と導入がさまざまに試みられている。しかし、その社会実装は容易ではない。その要因のひとつとして、業務遂行を支えている「知」の存在に従業員自身が気づいていないことが想定される。AIシステムが本当に利活用されるには、AI利用の文脈(コンテキスト)構築が重要であり、そのためには現行業務遂行における「知」を認知的側面のみならず情動的側面をも含め顕在化することが重要になる。本稿では、介護現場におけるAI利用のコンテキスト構築を目的とする、「作業と仕事の見える化」を主題にした活動と道具(ツール)のデザインを取り上げる。あわせて、その展開を可能にしたデザイナーと当該業務の実践者である介護者との共同デザインを詳述する。そこからコンテキスト構築を目的とするデザインにおける「共同」の意義を論じる。

  • 奥山 裕也, 重松 宏太朗, 佐野 ちひろ, 根﨑 絢子, 勝野 達郎, 藤本 香, 今泉 博子
    2023 年 29 巻 1 号 p. 1_58-1_63
    発行日: 2024/07/31
    公開日: 2024/11/07
    ジャーナル 認証あり

    漢方診療では、人対人の診察を行う一方で、現状では西洋医学と同様の診察デスクと診察台を使用することが一般的である。漢方診察の観察調査から、医師が電子カルテを使用しながら患者と視線を合わせて会話できる位置関係と、患者が全ての診察工程を移動することなく受けられることが重要であると明らかになった。そこで本研究では、2023年1月に開院した千葉大学墨田漢方研究所内の2部屋ある診察室にて、患者と医師の良好な会話姿勢を支援し、漢方診察における特徴的な姿勢変化を円滑にする診察家具のデザインを目指した。実際の漢方診療における観察調査および医師との原寸検討を通して、長方形および正方形の診察室に適したI字およびL字型の漢方用診察家具を制作した(図1、2)。

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