抄録
昨今、伝統工芸品・地場産品製造業界は厳しい時代を迎え、打開策を模索している。そこで岩手県工業技術センターではユニバーサルデザイン(以下UD)の理念を導入することで、より身近な生活用品となる「南部鉄瓶」を目指し、「ユニバーサルデザイン鉄瓶(以下UD鉄瓶)シリーズ」の開発を行った。特に本事例ではUDの理念を「弱者への配慮」としてではなく、あくまで鉄器を使用する上で「ユーザビリティの基本概念」として捉えて開発を行った。初めに従来の鉄器の使用手順を検証し、使用上の障害(バリア)を抽出した。次にそれらを改善するアイデアを展開し、この改善アイデアを1つ以上盛り込んだ鉄瓶のデザイン試作及び商品化を行った。本稿では開発に際してのコンセプト立案から製品評価にいたる一連のプロセスについて報告を行う。