デザイン学研究作品集
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震災遺構中浜小学校
本江 正茂野澤 和意西沢 有美西野 孝弘岩澤 拓海小野寺 志乃小山田 陽玉田 義一門傳 一彦松井 健太郎
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2021 年 27 巻 1 号 p. 1_2-1_7

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抄録

宮城県山元町立中浜小学校。2011年3月11日、大津波が迫る中、居合わせた児童と教職員ら90名は屋上に避難し、2階天井まで浸水するも、翌朝全員が救助された。その被災校舎を津波による破壊の痕跡を極力残したまま保存し、東日本大震災の震災遺構として公開した。新条例により建築基準法の適用除外とし、被災したままの状態で見学者の内部への立入りを伴う公開を可能とした。被災校舎そのものを核に、展示資料・案内冊子・案内映像・モニュメント・学習教材等を通じて見学体験を統合的に設計し、津波の脅威を見せつけるだけでなく、来館者への問いかけを通じて、それぞれが自身の災害への備えを考える場とした。震災遺構の設計では被災住民との協議が難航するケースも少なくないが、丁寧なプロセスで遺構に残るモノの意味を同定し、実現に漕ぎ着けた。被災経験を伝承し、地域の災害文化を担っていく施設である。

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© 2022 著作者
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