2021 年 27 巻 1 号 p. 1_80-1_85
車椅子による効率的な走行を実現するためには、ユーザーの身体的特性(体格や筋力・動作スキル)に基づいた車椅子設定をし、効率的な駆動トルクを生み出すための最適解を導き出す必要がある。最適解は理論計算によって決められるものではないため、試行錯誤が前提となり、このサイクルをいかに円滑反復できるかが鍵となる。課題解決の具体策として、車椅子の諸設定の迅速調整により最適なシーティングポジションを得るためのインタラクティブデバイス「SS01」を開発した。次いで、車椅子スプリントにおけるピークパフォーマンス(最大疾走速度)を目的解として定め、得られた結果を基に陸上競技用車椅子「WF01TR」の開発に繋げる試みを進めた(WF01TR はWheel Formula version 01 for Track Racer、SS01 はSeating Simulator version 01 の略語表記)。
本稿は、開発プロジェクトの中で、デザイナーが解決すべき問題や製品として充たすべきクオリティを高めるためのポイントをまとめたものである。