デザイン学研究作品集
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新しい「道路付属物」としての東京都標準型ベンチ及び上屋
田中 一雄西沢 健宮沢 功後藤 浩介
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1997 年 3 巻 1 号 p. 12-15

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抄録

本プロジェクトは、東京都道における道路上の休憩施設として、ベンチとシェルターを計画したものである。道路施設として位置付けられた第1号プロジェクトであり[注1、2]計画の特性は以下の4つに要約できる。○歩行者の復権と高齢化社会を受けて生まれたベンチ、上屋(シェルター)○法改正に基づき、新たに市民権を得た道路施設の誕生○高齢者、障害者など多様な歩行者が使いやすい休憩施設○東京都標準型として特徴あるデザインと高度な質従来、法的には道路上は効率的かつ安全な移動の用に供する場であるため、休憩等を目的とした上屋(シェルターともいう)やベンチの設置は法規上、不可能であった。法規上はバス停上屋に限って設置可能であり、ベンチ類はあくまでも仮設的な設置、あるいは花壇の淵などと解釈されていた。しかし、高齢化社会の進展や、各地で進められた歩行者環境整備の充実、道路上での休憩や飲食などの利用者ニーズの変化の流れをうけて、「道路法施行令及び道路構造令の一部改正」が行われ、道路管理者が道路の管理上必要と判断したものは、道路付属物(法規上道路になくてはならないもの)として、「ベンチもしくは、ベンチ付の上屋」を設置できることとなった。本計画は、こうした法規改正を受けて、東京都建設局の計画に基づき、高齢者等の休息を主体とした、幅広い利用ニーズにも応えるものとして道路上の歩道部分にベンチとその上屋を設置したものである(高齢者や障害者等多様な歩行者に対する優しさとゆとりを持った道路整備)。そのデザインは、対象地となる首都東京の都市性と今日性を表現するシンプルかつクリアーなものとし、その機能的特性から従来のバス停上屋などとは異なった形態を持ち、日除けを主体とした特徴ある形態とした。ベンチについては、高齢者の使用に配慮した形態とし、車椅子スペースも確保している。また、設置対象となる東京都道の状況は多様であるため、シェルター寸法やベンチの素材、形態などに多様性をもたせ、設置環境にも対応するシステム設定とした。

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© 1997 著作者
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