2016 年 40 巻 1 号 p. 15-28
PECS指導では音声表出の促進が報告されている。しかし、PECS指導あるいは付加的手続きと音声表出の内容における機能的関係は明らかになっていない。本研究では、 2 名の自閉スペクトラム症児に対して通常のPECS指導と時間遅延及びモーラリズムタッピングの併用指導を実施し、音声表出に及ぼす影響の差異を比較した。時間遅延では要求を満たすまでに5 秒間遅延した。モーラリズムタッピングではモーラの数だけカードをタッピングしながら音声を提示した。研究デザインは対象者間及び物品間多層ベースラインデザインを用いた。結果、通常のPECS指導と時間遅延では既に生起している音声の頻度を増加させたが、新規の発語は生起しなかった。一方、モーラリズムタッピングでは特定の物品で新規の発語が生起した。しかし、その生起頻度に明らかな増加が見られなかったため、モーラリズムタッピングで形成した発語の生起頻度を増加させることが今後の課題として挙げられた。