2019 年 43 巻 1 号 p. 173-181
本研究では、将棋において一度負けた局面で打った手と同じ手を打ち、打った後にどのような局面になるのかを予測することが難しい自閉スペクトラム症・知的発達症のある青年に対して、遊びスキルの向上を目指した指導を行った。対象者は、将棋の駒の動かし方や基本的なルールを理解し、実行できた。教材には、“9マス将棋”を用いた。ベースラインでは、9マス将棋の一番簡単な課題を複数回行った。介入では、負けた局とは違う行動をすること・駒を動かした後に、相手がどう動かすかを指で予測する行動の2つを指導者がモデル提示を実施し、練習を行った。その後、プローブとして対象者が勝つごとに難易度の高い課題を提示し、ベースライン同様の手続きで実施した。その結果、ベースラインでは見られなかった2つの行動が、介入後のプローブ期において、自発的に生起する様子が見られ、より難しい局面で勝つことができるようになった。この結果から、本研究における指導によって、将棋の遊びスキルが向上したと考えられる。一方で、本来の将棋のようなより複雑な局面に対応できるスキルの検討、指導が今後の課題だと考えられる。