アロマテラピー学雑誌
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研究ノート
市販精油中のトコフェロールとフィトステロールの分布に関するGCMS-SIMモード分析による検討
中島 悦子鈴木 悟沢村 正義
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2020 年 21 巻 4 号 p. 24-36

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抄録

本研究は,選択的イオンモニタリング(SIM)モードでのガスクロマトグラフィー–質量分析(GCMS)により,市販の117種類の精油中のα-, β-, γ-, δ-トコフェロールおよびフィトステロールであるカンペステロール,スチグマステロール,β-シトステロールの分布を明らかにしたものである。トコフェロールおよびフィトステロールは機能的特性を有し,抗酸化能,皮膚の角質化の防止,抗炎症,抗がん作用などが知られている。46種類の精油中に,トコフェロールおよび/またはフィトステロールが検出された。フィトステロールはまた血清コレステロール降下作用を有する。トコフェロール含量が特に高かった精油は花から得られたアブソリュートで,ロータス(Nelumbo nucifera),キンモクセイ(Osmanthus fragrans),ダマスクローズ(Rosa damascene),ブルーム・スパニッシュ(Spartium junceum),ジャスミン・サムバック(Jasminum sambac)であった。フィトステロール含量は,ロータス,バイオレット(Viola odorata),キンモクセイの花からのアブソリュートで高かった。カンキツ類の圧搾油の中では,ユズ(Citrus junos)精油でトコフェロールとフィトステロールの含量が共に高かった。水蒸気蒸留油においては,23種類の精油にトコフェロールおよび/またはフィトステロールが検出された。71種類の精油については,トコフェロールおよびフィトステロールはいずれも含まれていなかった。本研究の結果は,アロマテラピー,化粧品,香粧品,香水などの分野において,植物精油のさらなる機能性を示唆するものである。

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© 2020 公益社団法人 日本アロマ環境協会
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