アロマテラピー学雑誌
Online ISSN : 2189-5147
Print ISSN : 1346-3748
ISSN-L : 2189-5147
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原著論文
  • 中島 大輔, 岸田 文, 徐 燕麗, 谷 和樹, 王 端陽, 松本 雅子, 永田 真紀, 伊佐 亜希子, 清水 邦義
    2025 年26 巻3 号 p. 72-83
    発行日: 2025/12/24
    公開日: 2025/12/24
    ジャーナル フリー

    本研究では,マートル精油の吸引がProfile of Mood States2 (POMS2)による感情変化とストレスおよび脳内ワーキングメモリ活動を反映するFmθに与える影響を網羅的に探索した。また,その影響の性差を検討した。マートル精油の吸引前後で,POMS2短縮版と唾液コルチゾール濃度を測定した。さらに,視覚探索課題中とその前後の脳波Fmθ波・β波含有率と心電図LF/HFを測定した。GC-MSにより参加者に呈示したマートル精油の定量分析を行った。マートル精油の吸引により女性ではPOMS得点の低下と活気–活力の上昇が,男性では疲労感の軽減が観察された。また,唾液コルチゾール濃度が低下する傾向が示された。さらに,男性ではFmθが亢進し,女性では課題後のβ波の低下が認められたことからワーキングメモリの賦活と鎮静作用が示された。GC-MS分析の結果,参加者に呈示されたマートル精油を含む空気からα-pinene 94.6 µg/m3,1,8-cineole 10.3 µg/m3,d-limonene 37.5 µg/m3が検出された。さらに,指標間の変動を用いた相関解析により,マートル精油のみで生理的変動の相関が認められた。男性では課題中LF/HFと課題後コルチゾールの間に有意な強い正の相関のみが認められ,女性においては,課題中LF/HFと課題後コルチゾールの間に有意な中程度の正の相関と課題後後頭部βと課題中HFの間に有意な強い負の相関が認められた。Fmθの変動と他の生理指標との相関は認められなかったことから,マートル精油の亢進作用は自律神経系の賦活とは異なる機序の存在が示唆された。今後の研究では,嗅覚受容体や脳内代謝および自律神経系それぞれの系に対してで,マートル精油に含まれるα-pinene,1,8-cineole,d-limoneneが性別ごとにどのような機序で心理生理的効果をもたらすかを詳細に検証する必要がある。

  • 榊原 雅人, 田窪 詠子, 佐井 賢太郎
    2025 年26 巻3 号 p. 84-94
    発行日: 2025/12/24
    公開日: 2025/12/24
    ジャーナル フリー

    香りが引き起こすリラクセーション反応によって心拍変動高周波成分が増加することから副交感神経活動が高まることが報告されている。しかし,心拍変動高周波成分は副交感神経の活性化とは独立に呼吸変数(たとえば,呼吸数)の影響を強く受ける。本研究は呼吸の変化に応じた心拍変動(呼吸性洞性不整脈)を評価することによって香りの効果を検討した。この際,呼吸性洞性不整脈の振幅を心肺系の休息機能の指標として位置づけ,圧受容器反射感度を副交感神経の指標として評価した。実験はゼラニウム精油を呈示する群(実験群,N=14)と子犬の動画を視聴する群(統制群,N=14)を設定し,呼吸,心電図,連続血圧を測定した。呼吸性洞性不整脈は呼吸周波数を中心に0.14 Hz帯域の心拍変動の振幅を求めた。実験の結果,いずれの群も主観的なリラクセーション得点が高まった(p<.01)。呼吸性洞性不整脈の振幅は実験群で有意に増大したが統制群では変化しなかった(p<.05)。圧受容器反射感度は統制群に対して実験群で増加する傾向があった(p<.1)。一方,呼吸変数を調整したとき実験群の呼吸性洞性不整脈の振幅(試行2)は統制群に比して有意に大きかった。これらの結果から,香り刺激の呈示によってリラクセーション反応にかかわる心肺系の休息反応が生じこの背景で副交感神経活動も高まることが示唆された。

事例報告
  • 井藤 克美, 野本 雅樹, 山下 智嗣
    2025 年26 巻3 号 p. 95-103
    発行日: 2025/12/24
    公開日: 2025/12/24
    ジャーナル フリー

    認知症患者の歯科訪問診療では,診療拒否や治療拒否など,しばしば困難な場面に遭遇する。今回,われわれは,歯科訪問診療認知症者を対象に,新たに歯科診療が必要となった患者に対し,歯科評価,嚥下機能評価をもとに歯科治療や口腔ケア指導,嚥下リハビリテーションを行う「歯科介入」と,アロマテラピートリートメント(AT)の併用がどのような影響を及ぼすかを試験した。試験は4群間,多施設並行観察研究とした。歯科訪問診療介入予定となった認知症者80例(ラベンダー併用群20例,ベルガモット併用群20例,ひのき20併用群例,アロマ非実施群20例)を対象とし,観察研究期間は4か月とした。AT処置は,週1~2回の歯科訪問診療時,患者自室にアロマシートを掲示・設置しアロマセラピストによるトリートメントとした。その結果,訪問歯科介入前と介入4か月後の長谷川式認知症スケール(HDS-R)のスコアが平均5.9点から7.8点へ有意に変動した(p<0.001)。また,歯科介入に加えてAT併用療法におけるHDS-Rスコア推移では,歯科介入単独に比べて有意に改善した(p<0.002)。以上より,AT併用療法は認知症者の歯科訪問診療の治療効果向上の一助となる可能性が示唆された。

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