本研究では,肌荒れや脱毛の原因の一つとして考えられている5α-リダクターゼの働きを阻害する精油の探索を行った。精油は市販されている30種類を評価した。その結果,サンダルウッド(Santalum album),ジャーマンカモミール(Matricaria recutita),パチュリ(Pogostemon cablin),ローズ(アブソリュート)(Rosa × damascena)に5α-リダクターゼの阻害効果が認められた。そこで活性の認められた精油に含まれている主要成分を確認するため,GC-MS分析を実施したところ,ジャーマンカモミールにはbisabolol oxide A,ローズ(アブソリュート)には2-phenylethyl alcohol,パチュリにはpatchouli alcoholが主要成分として検出された。次にこれらの成分の5α-リダクターゼ阻害活性を評価したところ,patchouli alcoholのみが活性を示し,その50%阻害濃度は29.8 µg/mL(133 µM)であった。このことからパチュリの5α-リダクターゼ阻害活性の一部はpatchouli alcoholが担っていると考えられるが,精油が示す生物活性は含まれているさまざまな成分の複合的な作用も考えられるため,精油の品質評価においては,その他の成分についても着目する必要がある。
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