アロマテラピー学雑誌
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事例報告
自律神経機能に対する芳樟精油の香りの効果
吉本 隆治天満 和人田中 敦
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2021 年 22 巻 2 号 p. 17-23

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抄録

【はじめに】鹿児島県の県木はクスノキであり,これは江戸時代の薩摩藩から続いた樟脳生産と歴史的に関係がある。現在も指宿市開聞でクスノキの一種の芳樟から精油を生産している。芳樟精油は,ラベンダー精油と同様,鎮静作用があるとされるl-リナロールが主成分である。ラベンダー精油を用いたアロマテラピーの芳香療法は,リラックス効果をもたらすことがさまざまな先行研究により示されている。本研究の目的は,芳樟精油を用いた芳香療法の効果について,自律神経機能の面から検討することである。【方法】対象は健常若年女性17名で,方法は椅座位にて安静(5分)・芳香(5分)・芳香後(10分)とし同時に指尖脈波計より脈波を収集した。ティッシュに芳樟精油を1滴(0.05 mL)垂らし嗅ぐ芳香療法とした。解析はTAOS社製のソフトを用い,高周波成分(HF),低周波成分(LF),心拍数(P),心拍変動係数(CVRR),エントロピーを算出した。測定前後で疲労感と芳樟精油の好き嫌いをVisual Analogue Scale(VAS)で,香りの印象をアンケートで聴取した。【結果】芳香条件では安静条件と比較して,副交感神経活動の指標であるHFは有意な増加,交感神経活動の指標であるLF/HFは有意な低下を認め,疲労感VASも有意な疲労感改善を認めた。【結語】芳樟精油の芳香療法を行うと,5分間でHFが増加しLF/HFが低下したことから,芳樟精油は数分で副交感神経系を優位にし,自覚的疲労感を改善する可能性が示された。

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