抄録
プロトン伝導性高分子膜の一種であるパーフルオロスルホン酸ポリマー、Aciplex-1004(旭化成社製)にγ線を照射した結果、約3kGy照射した膜の電気伝導率は未照射膜の電気伝導率の約400倍を示した。
またXPSによるC、O、F、Sのそれぞれの元素についての化学結合状態の変化を調べた結果、吸収線量の変化とともに膜の化学結合状態に変化が見られた。XPSの結果において膜の基本構造を形成するC、Fの結合状態に変化は見られなかったが、吸収線量の増加とともにイオン交換基であSO3H基の割合が増加した。
このことからγ線を照射することによりプロトン伝導に寄与するSO3H基が増加し、電気伝導率が上昇したものと考えられる。また中性子線照射後の測定においても同様の効果がみられた。