抄録
本稿の目的は,原子力発電所の立地が地方財政へ与える影響を実証的に分析することにある.先行研究との主要な違いは,中央政府から配分される補助金額と,市区町村の独自財源である地方税額とを区分している点にある。原発立地が地方財政へ及ぼす影響は,主として固定資産税収の増加に体現される.しかし,固定資産税収は,減価償却によって経年的に減少するため,中長期的な財政効果を維持できない.原発立地は,他の自治体と比較して,補助金漬けであるとは言えない.その理由は2つある.1つは,原発立地が固定資産税収を押し上げるために地方財政調整制度が働き,地方交付税額が減少するためである.2つ目は,電源立地に伴って交付される補助金の多くは,原子力発電所が立地する以前に交付される(金額は決して多額ではない)ため,長期的な効果は存在しない.