日本原子力学会 年会・大会予稿集
2007年秋の大会
セッションID: E22
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新型原子力システム
原子力・炭素資源協働水素による燃料電池発電方式--Na冷却炉・メンブレンリフォーマー・アルカリ燃料電池システムの評価--
*堀 雅夫
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抄録

 原子力と炭素資源(化石燃料・バイオマスなど)の両方を使用して協働的プロセスによって製造する水素を、燃料電池に供給して高効率で発電する方式について、その概念、特長、代表的システムの評価結果を報告する。  吸熱の炭素+水反応プロセスに原子力熱を与えて水素を生成する方法は、原子力の熱エネルギーが水素の化学エネルギーに転換され、この水素を燃料電池内で電気化学的に反応させれば、タービン発電など熱機関サイクルの熱力学的制限を受けない高効率の発電が可能になる。  この原理の応用として、天然ガス・透過膜式水蒸気改質装置(メンブレンリフォーマー)にNa冷却原子炉から熱供給して水素を製造し、この水素をアルカリ燃料電池(AFC)に供給して発電するシステムについて、性能評価を行った。  その結果、原子炉熱利用率60%・AFC発電効率60%の場合には原子力+天然ガスの両熱量合計に対する熱効率は56%(HHVベース、以下同)、原子炉熱利用率70%・AFC発電効率70%の場合には同熱効率は68%と計算された。天然ガスの改良型コンバインドサイクル(ACC)発電の熱効率は50%(1300℃級)~53%(1450℃級)、Na冷却原子炉(出口温度約500℃)による熱効率は42%なので、本方式は熱効率的に優れている。さらに、天然ガスACCの高温・高圧に比べて、このメンブレンリフォーマー+Na冷却炉+アルカリ燃料電池方式は、中温以下・低圧で全てのプロセスが進行するため材料・設備が経済的になる。  この協働的・電気化学的方式は、(1)両エネルギー資源を節減できる (2)化石燃料の燃焼がないためCO2発生量が少なく、改質反応時に発生するCO2もプロセス内で分離される (3)発電コストを低減できる、などの特長を有し、今世紀のように原子力と炭素資源を同時・並行的に使用する状況において有力な発電方法である。

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© 2007 一般社団法人 日本原子力学会
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