わが国の原子力を取り巻く社会的状況の特徴のひとつとして、近年の無関心層の増大が挙げられる。つまり、従来的な原子力に対する理解促進および意思決定支援を狙ったリスクコミュニケーション活動(本報告では、コミュニケーション活動の目的を明確にするため、この活動を「理解促進コミュニケーション」と呼ぶ)の場を作っても、その活動は一般市民の大多数にとっては興味のないものとなってしまいかねない。したがって第一に、原子力界は、関心を持つ層の拡大を目指す必要がある。
ここで、このような活動によって関心層が拡大され、原子力に対する理解促進コミュニケーションが実現できる素地が広がったとしても、あいかわらずの無関心層が存在することは明らかである。そこで、市民に対する信頼醸成を主たる目的に据えた活動が必要となり、原子力界はより広範なコミュニケーション活動を行わなければならない。この活動をここでは、理解促進コミュニケーションと区別するために、信頼醸成コミュニケーションと呼ぶことにする。
本報告では、理解促進コミュニケーションと信頼醸成コミュニケーションを含む、市民に向けたコミュニケーション活動(パブリックコミュニケーション)を俯瞰的に捉え、全体像を整理する。その上で、各活動について、進めるための条件とは何か、また、どのように進めるべきかを検討する。
なお、本報告は「ファシリテーションフォーラムの構築に向けて(5)原子力PR館の現状とあり方」とのシリーズ報告であり、独立行政法人原子力安全基盤機構の原子力安全基盤調査提案公募研究の一環として実施された。
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