抄録
公衆に対する放射線の実験教育のために、製作が容易なGM計数管が考案されて活用されている(矢野・米村式ガイガー計数管)。しかし、それらのGM計数管の検出器としての動作特性に関する検討はあまり行われていない。そこで、空き缶を用いた気体計数管を試作して、その動作特性の調査を開始した。今回試作した計数管の新しい点は、陽極に縫い針を、計数ガスにドライアイスから発生する炭酸ガスを利用したことである。矢野・米村式ガイガー計数管は、リード線の芯線の一本を陽極にしているが、製作はあまり容易ではなく個人の技術に依存する。これに対し、縫い針の先端に生じる放電を利用することにより、この困難が軽減すると思われるが、検出器の有効体積が減少する可能性はある。また、矢野・米村式ガイガー計数管では計数ガスとしてライター燃料のブタンガスを使っているが、ブタンは可燃性のガスであり取扱に安全上の問題がある。これに対して、ドライアイスからの炭酸ガスを用いれば、爆発の危険性もなく安全である。また、炭酸ガスはブタンガスに比べてガス増幅特性に優れているので、より安定して動作する可能性がある。ガス計数管の動作機構は、計数ガスだけではなく、入射する放射線の種類にも依存するので、今回はこの観点からも考察を行った。その結果、これらの簡易気体計数管がGMモードだけでなく、SQSモードで動作する可能性があることを見出した。