抄録
地層処分生物圏評価においては,処分サイトの地表環境特性を考慮してパラメータを適切に設定することが重要となる。しかしながら,生物圏モデルで取り扱うパラメータの数が膨大であるため,すべてのパラメータに関して処分サイトにおける情報を取得することは難しい。そこで,実際の地表環境を対象とした生物圏評価の実施に先立って検討を行っておくべき現段階における技術的課題として,感度解析等の手法を用いることにより,優先的に検討すべきパラメータを抽出し,評価結果への影響特性を把握するとともに,実際の地表環境においてデータを取得する場合に留意すべき点を整理する。
既往の検討における感度解析の結果,河川流量や侵食速度等のコンパートメント間の物質移行パラメータは,線量への換算係数(処分場からの核種移行率を人間が受ける放射線量に変換する係数)に与える影響が大きいことが示されている。例えば,河川流量は,河川水コンパートメント中の核種濃度を大きく変動させるパラメータである。また,侵食速度は,表面土壌コンパートメント中の核種濃度を変動させる。これらのパラメータは,結果として,河川水コンパートメントや表面土壌コンパートメント中の核種濃度に基づいて算出される農作業従事者グループの線量への換算係数を変動させる。
本発表では,他のパラメータを代表値で固定し,コンパートメント間の物質移行パラメータを個別に変動させて感度解析を行い,パラメータの変動が線量への換算係数に対して与える影響特性を分析した結果を報告する。線量への換算係数に与える影響が大きなパラメータの影響特性の分析結果は,実際の地表環境において取得された情報に基づく生物圏評価結果の予測等に反映できると考えられる。
さらに,パラメータ設定の留意点のひとつであるパラメータ間の相関について,河川流量や灌漑水量等を例として具体的に議論する。