抄録
JCO臨界事故の原因を構成する事柄として、「常陽」燃料用転換工程において作業手順書を尊重しないことが常態化していたことがあげられる。そのような状況が生じた要因として、「常陽」初装荷燃料用再転換に始まる操業を行った「研究室」施設及び改造前「転換試験棟」施設がいずれも「加工施設」としてではなく、試験を行うための「使用施設」として認可されて、作業手順書なしの操業が長年にわたって行われてきたことが小さからぬ役割を持っていると考えられる。またこの間の操業の二酸化ウラン粉末製造において申請書記載のバッチ間混合の他にクロスブレンディング法によるロット混合も加えて2段階の混合工程が遂行されていることが規制機関により看過されてきた。これらの状況をもたらした根本原因として、「推進」と「安全規制」の未分離、及び実際の工程に関する知見に欠くという規制側の技術能力不足があったと考えられる。