抄録
回転式ターゲットを用いて二種類の金属板(ZrとNb)に静電加速器からの2-3 MeV陽子線を交互に繰り返し照射し,Sr造影剤の吸収端(16.1 keV)前後で二種類のエネルギー(波長)を持つ準単色パルスX線(それぞれ15.7 keV,16.6 keV)を発生した.これらのX線とCe:YAGシンチレータ+電子増倍型CCDから構成される高感度X線動画カメラを用いて,水ファントムの動画撮影を行った.ファントム内に模擬血管(内径1 mmのプラスチックチューブ)を通し,ポンプで造影剤を注入してその流動状態を撮影した.異なるエネルギーのX線で撮影された隣接するフレーム同士の差分を取って動画を再構成することにより,造影剤の像のみを強調して高いコントラストを実現できることが分かった.これらの結果をもとに,被ばく線量と造影剤投与量を低減できる新しい血管造影動画撮影技術の可能性について議論する.