抄録
核分裂生成物(FP)の崩壊熱計算は、長いあいだ実験値との良好な一致を見ることができなかった。これは、短寿命FPが放出するガンマ線の測定結果からこれら核種の崩壊スキームを正しく再現するのが困難なために、FPが崩壊に伴い放出するエネルギーがガンマ線では過小に、ベータ線では過大に評価されていたためである。この問題を回避する目的から我が国ではベータ崩壊の大局的理論が導入され、米国もこれに従った。しかし、新しいTAGS(Total absorption gamma-ray spectrometer)実験がOECD/NEAの核データ評価国際協力(WPEC)の枠組みで行われたことで、この問題の本質的な解決が可能となった。本研究ではTAGSにより測定したFP崩壊熱平均エネルギーを原子炉崩壊熱計算に導入した場合の精度向上について分析することにより、今後更なる測定が望まれるFP核種の同定を目的とする。