抄録
福島第一原子力発電所の事故によって放出された放射性ストロンチウムを環境中から除去することを目的とし、ストロンチウムを選択的に吸着する繊維を開発した。ストロンチウム吸着繊維(ST繊維)は、放射線グラフト重合法によって6-ナイロン繊維の表面に陽イオン交換基をもつグラフト高分子鎖を付与し、さらに高分子鎖中にチタン酸ナトリウム粒子を担持させることによって作製した。海水を用いたバッチ試験の結果から、市販のストロンチウム選択吸着粒子(SrTreat)に比べて高速で吸着できることがわかった。繊維は粒子に比べて単位体積あたりの接触面積が大きいためである。ST繊維は、除染に適した組み紐やワインドフィルタに成形できることから、除染現場や環境モニタリングなどの活用が期待できる。