抄録
極冷中性子(VCN)は熱・冷中性子よりも長い波長を有し,これまで主に干渉計等の基礎物理研究に用いられてきた.VCN はミラーでの反射が容易なため,集光光学系によって強度を上げ,同時に位相分散も低減できる可能性がある.また,中性子スピンエコー分光器のエネルギー分 解能は入射中性子波長の3乗に比例して向上するので,スピンエコー法に長波長中性子を用いる利点は大きい.そこで我々はフランス,ラウエランジュバン研究 所の高中性子束炉にある極冷中性子実験孔においてこれまでにない高分解能な MIEZE (Modulated Intensity by Zero Effort) 型中性子スピンエコー装置を構築し,極冷中性子の新たな利用を拓くべく実験を行ってきた.発表では実験の現状と今後の展開を述べる.