抄録
今日のフランスで安全規制機関として機能しているASN(原子力安全局)には高い独立性が与えられているが、その前身となる組織については状況が異なっていた。そこで本研究ではフランスにおいて原子力安全に関わる組織がどのように形成されてきたのかについて、関係する複数の資料を調査し、それらの情報を再構成する。第二次世界大戦後に設立された原子力技術の研究機関であるCEA(原子力庁)は安全対策においても中心的な役割を担ってきた。1973年、産業省下部にSCSIN(原子力施設安全中央局)が設立され、安全規制が導入されるが、その後もCEAは専門技術を有する組織として原子力施設の安全評価等の機能を保持していた。これは原子力の推進と安全を同じ主体が担当するという構図である。これらの組織の変遷を構成や独立性といった観点から分析することで、日本との制度比較にあたって不可欠となる背景の一部を明らかにすることができる。