糖尿病学の進歩プログラム・講演要旨
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セッションID: DL-3
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レクチャー:糖尿病の成因と病態の解明に関する研究の進歩(2)
アディポサイトカイン
*木原 進士
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キーワード: アディポネクチン
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抄録

我が国における糖尿病と血管合併症増加の原因として、肥満の関与は周知の事実である。我々はその病態の分子機構を明らかにするためヒト脂肪組織発現遺伝子の解析を行い、脂肪組織が様々な生理活性ペプチド(アディポサイトカイン)を分泌する臓器であることを明らかにした。アディポサイトカインとは、脂肪細胞特異的なレプチンやアディポネクチンに加え、従来脂肪組織に発現するとは考えられていなかった、サイトカイン、ケモカイン、炎症反応蛋白、線溶系調節因子などを含む概念である。そもそも腫瘍壊死因子(TNF)-alphaは細胞致死物質として同定された病原体や腫瘍に対する生体防御因子であるが、脂肪組織においても発現していること、その作用を中和するとインスリン抵抗性が改善することが報告され、インスリン抵抗性発症に関与する重要な因子であると位置づけられている。アディポネクチンは、ヒトにおいてその血中濃度がインスリン感受性と正相関し糖尿病患者において低値であること、欠損マウスが高脂肪高蔗糖食により糖尿病を発症することより、過栄養状態での血中濃度低下が糖尿病発症の原因となると考えられる。また、TNF-alphaは脂肪細胞におけるアディポネクチン発現を抑制し、アディポネクチンはマクロファージのサイトカイン産生の内TNF-alphaを特異的に抑制した。従って、炎症性アディポサイトカインの増加と抗炎症性因子アディポネクチンの低下という内分泌異常が、糖尿病発症に重要であると考えられる。糖尿病発症に加え、低アディポネクチン血症は動脈硬化の危険因子であることも明らかとなっている。アディポネクチンの作用をヒト血管壁構成細胞初代培養系およびモデルマウスで検討したところ、アディポネクチンは血管が傷害を受けると局所に集積して血管内皮細胞・血管平滑筋細胞・マクロファージに作用して過剰な血管リモデリング反応を抑制する作用を有していた。最近、アディポネクチンは血管内皮機能障害や心筋リモデリング異常にも関与することが明らかとなってきた。糖尿病の成因と病態において、脂肪細胞が液性因子を介してインスリン抵抗性や心血管リモデリングに作用するとの観点から、アディポネクチンを中心としてアディポサイトカイン研究につき詳解したい。

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© 2005 日本糖尿病学会
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