糖尿病学の進歩プログラム・講演要旨
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セッションID: DL-2
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レクチャー:糖尿病の成因と病態の解明に関する研究の進歩(2)
PPARγ・CBPによる糖代謝・体重の制御機構
*山内 敏正
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抄録
日本人の糖尿病患者数は激増している。その主因はインスリン分泌低下の素因に加えて、生活習慣の変化による肥満・インスリン抵抗性要因が増加しているためと考えられる。従って、肥満とインスリン抵抗性の原因の解明とそれに立脚した根本的な予防法や治療法の確立が極めて重要である。
我々は遺伝子欠損マウスを用いた解析により、リガンド応答性の核内受容体型転写因子PPARγとその転写共役因子であるCBPが、高脂肪食による肥満・脂肪細胞肥大化・インスリン抵抗性惹起の原因となっていることを示した(J. Biol. Chem. 276:41245, 2001; Nature Genetics 30:221, 2002)。そしてPPARγ活性の部分的阻害剤が、新規抗肥満・インスリン抵抗性改善薬となりうることを示した (J. Clin. Invest. 108:1001, 2001)。
次に我々は、インスリン感受性が亢進しているPPARγ或いはCBPのヘテロ欠損マウスの小型脂肪細胞では、レプチンと共にアデイポネクチンの発現が上昇していることを見い出した。さらにアディポネクチン欠乏をきたす脂肪萎縮や肥満2型糖尿病モデルマウスへの投与実験などにより、アディポネクチンがインスリン感受性を正に調節する主要なアディポカインであることを見い出した。すなわち、脂肪萎縮・肥満ではアディポネクチンが低下し、糖尿病・代謝症候群の原因となっており、その補充がAMPキナーゼやPPARαの活性化を介し、これらの効果的な治療手段となることを明らかにした (Nature Medicine 7:941, 2001; Nature Medicine 8:1288,2002)。さらに我々は発現クローニング法によりアディポネクチンに結合する膜蛋白AdipoR1とR2を同定し、siRNAを用いた遺伝子ノックダウンによる機能解析などにより、それぞれ骨格筋に強く作用するC末側のglobular領域のアデイポネクチン及び肝臓に強く作用する全長アデイポネクチンの作用を伝達する受容体であることを示した(Nature 423:762,2003)。さらに肥満・2型糖尿病のモデルマウスの骨格筋・脂肪組織においては、AdipoR1・R2の発現量が低下し、アディポネクチン感受性の低下が存在することを示した(J. Biol. Chem. 278:30817, 2004)。
肥満では血中アディポネクチンレベルとアディポネクチン受容体の発現が低下し、糖尿病・代謝症候群の原因となっている。我々が同定したアディポネクチン受容体の作動薬やアディポネクチン抵抗性改善薬の開発は、糖尿病・代謝症候群の根本的な治療法開発の道を切り開くものと強く期待される。
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© 2005 日本糖尿病学会
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