糖尿病学の進歩プログラム・講演要旨
糖尿病学の進歩プログラム・講演要旨
セッションID: LS-4
会議情報

ランチョンセミナー
食後高血糖制御の重要性
*清野 弘明
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
 1987年、ホノルルハートプログラムではブドウ糖負荷試験の1時間血糖値が高ければ高い程と冠動脈疾患発症のリスクが高まることが報告されました。2000年には、ヨーロッパ人を対象としたDECODE Studyでブドウ糖負荷試験2時間血糖値と心血管死亡率が有意の正の相関を示すことが報告されました。1996年には、2型糖尿病患者を対象としたGerman Diabetes Intervention Studyの結果では、2型糖尿病患者の食後1時間血糖値は、心血管疾患発症リスクと正の相関を示すことも報告されました。 海外の成績だけではなく、日本からも食後血糖値と心血管疾患発症についての疫学研究が報告されました。山形大学の舟形町研究(1999年)では、境界型という軽度の食後血糖上昇も心血管死亡に関係することが証明されました。また、アジア系人種を対象としたDECODA Study(2004年)の結果も同様に、ブドウ糖負荷2時間後血糖値が総死亡、心血管死亡の予測に重要であることが報告されました。 さらに2003年には、食後血糖改善薬であるアカルボースを用いた境界型から糖尿病発症を抑制できるか否かの研究であるStop-NIDDM trialにて、心血管疾患の発症抑制に関して、プラセボに比較して相対リスクが49%も低下、新規高血圧発症の相対リスクも34%低下したことが報告されました。Stop-NIDDM trialでは、IGTを対象にした研究でしたが、2型糖尿病を対象としたアカルボースとプラセボ群での52週以上追跡した7つの研究の成果を統合したメタ解析の結果では、アカルボースにより心筋梗塞の発症の相対危険度は64%と有意に低下し、全身血管イベント発症の相対危険度は35%低下していることが報告されました。 一方基礎的研究からも、グルコーススパイク(急唆な血糖上昇)が血管内皮細胞のアポトーシスを誘発することが証明され内皮細胞障害を惹起することが解りました。 以上より糖尿病患者の血糖コントロールの目標として、食後高血糖を制御し大血管発症を抑制する治療が必要となります。このためには、HbA1Cだけではなく、血糖値の動揺を示すM値を指標として治療を考えていくことも必要となります。M値を用いたSU薬、グリニド系薬の評価と、食後高血糖制御の治療戦略を考えてみたいと思います。
著者関連情報
© 2005 日本糖尿病学会
前の記事 次の記事
feedback
Top