抄録
1.糖尿病治療におけるセルフケアの重要性と満足感 糖尿病がもたらす合併症の脅威は良好なセルフケアの習慣や効果的な薬物療法によって減らせることが明らかになってきた。従って、糖尿病診療ではセルフケアの改善を図るためにさまざまな取り組みがなされてきた。病気や治療法などの知識の患者教育、患者心理やQOLを考慮した患者指導、またコメディカルに対する糖尿病ケア専門家の養成などである。このような取り組みもあり患者が治療者側に期待する診療内容も変化してきた。糖尿病診療に対する患者の満足は単に検査データを伝えるのではなく、セルフケアの目標設定やセルフケアの重要性や自信を高めることであった。2.セルフケア行動を改善するために有効なエンパワーメント法 過去においては患者のセルフケアを改善させるために一方的で強制的な指導がおこなわれていた。患者の気持ちを考慮せずに「禁酒しなさい」、「1400kcalにしなさい」などと指示することである。このように患者を制御しようとするアプローチは望ましい行動変容に繋がらない。患者の糖尿病に対する感情に焦点を当て、患者の自律性を支援するアプローチこそがセルフケア行動を改善させる。このようなアプローチの手法としてRobert Andersonが提唱したエンパワーメントがある。3.糖尿病診療支援ソフト「アキュチェックインタビュー」 セルフケアの障害となる要因、糖尿病を持ちながら生きていくことによる感情面での問題点、抑うつ度、低血糖、喫煙などの糖尿病診療で重要な治療上の問題を評価するためのITツールが「アキュチェックインタビュー」である。これはJoslin糖尿病センターGarry Welch博士により開発され、日本でも心理・行動学的研究の成果が報告されている。患者が入力したデータは結果レポートとしてプリントアウトされ患者と糖尿病ケア専門家が糖尿病の自己管理のために患者中心の議論を積極的に進めていくことができる。4.アキュチェックインタビューからエンパワーメントへ 私たちはアキュチェックインタビューを看護師の面談として導入することで、患者のエンパワーメントを促進し望ましい行動変容に繋がるアプローチを試みている。本セミナーでは具体的な事例を含めてアキュチェックインタビューの活用法について紹介する。