糖尿病学の進歩プログラム・講演要旨
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セッションID: BS-2-1
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シンポジウム:メタボリックシンドローム研究の最前線
疾患の概念
*山崎 義光
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抄録

日本人冠動脈疾患患者の7~8割は、その半分強が糖尿病残りがIGT(耐糖能異常者)症例が占めている。耐糖能異常は動脈硬化(症)を起こす強い危険因子であることはいうまでもない。耐糖能異常を含めた高血圧、異脂質血症(低HDL血症、高TG血症)も動脈硬化危険因子であり、インスリン抵抗性を伴うことが多いことより、動脈硬化疾患の基礎病態としてシンドロームX、インスリン抵抗性症候群が提唱された。MRFIT研究やフラミンガム研究、本邦でのJLIT研究の結果、上述の危険因子は単独としては、強い危険因子とはなりえないが、同時に合併する症例が多く、かつこのような症例で動脈硬化症の発症が高頻度に見られることより、マルチプルリスクファクター症候群とも呼ばれている。ことに糖尿病、耐糖能異常あるいはインスリン抵抗性の存在は、その他の危険因子よりより強い動脈硬化の危険因子なりうる可能性から、WHOのメタボリック症候群の考えでは、糖代謝異常・インスリン抵抗性を必須項目としている。我々も、耐糖能異常あるいは糖尿病が他の動脈硬化危険因子より、より強く動脈硬化の進展に寄与することを認めている。動脈硬化の新たな危険因子として、慢性炎症や食後高血糖が注目されている。これらの病態は、耐糖能異常者ですでに存在し、一部は酸化ストレスの亢進を介して動脈硬化進展の主たる促進因子である血管内皮障害と密接に関係することが明かとなっている。また、異脂質血症、高血圧に酸化ストレスや、血管内皮異常も高率に見られる。糖尿病治療は患者のQOL維持を目的とするべきであり、動脈硬化に対する効果の把握は極めて重要である。スタチンは抗炎症作用を有し、食後高血糖改善薬は抗糖尿病作用は弱いが、抗動脈硬化作用は強力であることが明らかになりつつある。従って、メタボリック症候群の概念の理解が糖尿病患者の統合的な治療方針決定に重要となろう。

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© 2005 日本糖尿病学会
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