抄録
糖尿病治療のための民間療法には、1.体重減少を目的とするもの、2.血糖上昇を抑える目的のもの、3.血糖降下を目的とするもの、4.その他のものに分類して考えることができる。1.体重減少を目的とする民間療法には、いわゆるダイエット法や、「やせ薬」と称せられるものなどがある。ダイエットに関する民間療法には、特定の食品に偏った摂食を薦めるものがあり、医師の指導する食事療法に反する場合があるので、実行しないようにしなければならない。またいわゆる「やせ薬」には、甲状腺末などの薬品が混入している場合もあり、健康被害を生じた例もある。2.血糖上昇を抑制する効能をうたっているものには、茶飲料などがあるが、医師の処方している内服薬と同じ効能を持っている成分を含む場合があり、併用した場合の相乗効果に注意を向けるべきである。3.個人で入手できる漢方薬などの中には、SU剤を混入していて低血糖を生じた事例もあり、成分のはっきりしないものは薦められない。 また、糖尿病は1型・2型・その他特定の型および妊娠糖尿病の4つの病型に分類され、それぞれに正常状態からインスリン依存状態までの病期が想定されている。治療法は各病期で異なり、一人の患者さんにつき同じ治療法が継続されたまま変更されず、血糖コントロールも変動しないということは、ほとんどあり得ないといってよい。糖尿病の病歴の中で、食生活が改善されたり運動療法が功を奏したり、体重減少に成功したりすることにより、糖尿病領域にあった人が正常領域に戻ることはしばしば経験されるところではあるが、そこに民間療法がどれだけ実質的な関与をしたかは、科学的に証明されていないことが多い。特に、1型をはじめどの病型においても、インスリン依存状態の場合には、ほぼインスリン治療以外に手だてはなく、健康食品や民間療法、漢方薬等では病態の改善は望めないどころか生命の危険にさらされることすらある。 これら民間療法の開始を相談された場合、糖尿病治療の原則である食事療法と運動療法を阻害しないものに限り許可すべきであり、薬物については併用はできるだけ避けるべきである。また、民間療法との併用について、患者の側から正直に医師に相談できるよう、診察時のコミュニケーションを良好に保つことが肝要である。