アフリカ研究
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特集:プレザンス・アフリケーヌ研究
黒いソクラテスは語る
─創始者アリウン・ジョップと学生組織─
佐久間 寛
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2018 年 2018 巻 94 号 p. 49-59

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抄録

創刊時の『プレザンス・アフリケーヌ』は政治的中立を標榜する文化誌であった。変化をきたすのは,1953年の特集「黒人学生は語るLes étudiants noirs parlent...」においてである。寄稿者である学生たちは,宗主国の同化主義を批判し,全面的独立以外に植民地状況を変える術はないと主張した。この主張は,彼らが属した学生組織FEANFの方針と基本的に合致するものだったが,それだけではなかった。FEANFがややもすれば政治的問題を文化的問題に優先させてきたのに対し,同特集の寄稿者たちは,言語,歴史,宗教,芸術といった文化面の植民地化を脱することなくして真の独立は実現しえないと主張した。同特集の刊行は,文化的脱植民地化の政治的重要性をラディカルに主張した点において,『プレザンス・アフリケーヌ』の歴史ばかりでなく黒人学生運動史においても画期的な出来事だった。この革新的な思想形成の場を生みだしたのは,『プレザンス・アフリケーヌ』を穏健な文化誌として創刊した当の人,アリウン・ジョップだった。こうした両義性をもつ創始者と黒人学生との関係を手掛かりに,本報告では政治と文化の狭間で揺れた20世紀中葉の黒人運動の再考を試みる。

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© 2018 日本アフリカ学会
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