アフリカ研究
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論文
ジンバブウェ・カリバ湖のカペンタ漁へのアクセスをめぐるポリティクスと資源利用に関わる諸問題
伊藤 千尋
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2023 年 2023 巻 103 号 p. 41-54

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抄録

本稿はカペンタ漁へのアクセスをめぐるポリティクスと資源利用に関わる諸問題を明らかにし,ポリティカル・エコロジー論の視点から考察した。白人入植型の植民地支配を経験したジンバブウェでは資源をめぐる人種間の不平等が歴史的に形成されてきた。そのため,本稿が対象とする商業漁業・カペンタ漁においても,政治・経済的な文脈を考慮することが不可欠である。カリバ湖におけるカペンタ漁とそれをめぐるポリティクスは,入植型植民地支配という歴史的文脈に根付いており,独立以前の漁へのアクセスには人種的な排他性が存在した。独立以降の漁へのアクセスにはパトロン - クライアント関係が機能していたが,土地改革と連動して実施された許可証の再分配と貸与制度の導入という変化のなかで,漁に携わるアクターは多様化し,一部ではインフォーマル性が高まった。事業者は,漁獲量の減少や湖上での売買などの違反行為を問題として認識していた。このような違反行為は,様々なスケールにおける制度変化やアクターによる実践が折り重なって生じていた。本稿が示したような人間-環境関係の複雑さを理解することは,資源管理の議論の土台として重要である。

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© 2023 日本アフリカ学会
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