2002 年 2002 巻 60 号 p. 65-73
昨今, アフリカ諸都市で生起する音楽。国, 地域, 時代によって猛烈なスピードで変化し続ける様々なポピュラー音楽のすべてに共通するのは, それらがショウ・ビジネス, つまり音楽産業を通して作りだされているということだ。本論は, アビジャンのラップがショウ・ビジネスの中でいかに形成されてきたかを分析することで, ポピュラー音楽とショウ・ビジネスとの関係性を具体的に記述することを目的とする。ラップはアビシャンのストリート・ボーイに支持されている音楽で, 歌詞, ダンスのレベルでストリート文化を直接的に取り入れている。ここではストリート・ボーイ出身の2組のラップ・アーティストがいかにショウ・ビジネスに参入しアルバムを作成していったかを具体的に検証し, そこで観察されたストリート文化の「商品化」について考察を加えながら, 現代アフリカ都市におけるポピュラー音楽どショウ・ビジネスとの関係を明らかにする。そしてその際, 経済過程, 意味伝達過程, 記号消費過程が重層的に錯綜する場としてポピュラー音楽を捉える視点が示される。