アフリカ研究
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ナミビア北部における植生変化と農牧民オヴァンボの建材利用の変遷
藤岡 悠一郎
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2005 年 2005 巻 66 号 p. 47-62

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抄録

南部アフリカの乾燥地域では, 伐採による疎開林の減少やブッシュ・エンクローチメント (Bush encroachment) の進行などの急速な植生変化に伴い, 住民の樹木利用が変化しつつある。本稿では, ナミビア共和国北部における植生環境とその地域に暮らす農牧民オヴァンボによる建材利用の相互的な変化を明らかにし, 現代における建材利用の新たな展開について考察することを目的とする。
オヴァンボは樹木を切りだした未加工の丸太を多量に用いて住居を建造するが, その建材には居住地周辺に優占する半落葉樹木のモパネ (Colophospermum mopane) の幹が主に用いられてきた。しかし, 建材に適した直径の太いモパネが減少するとともに, 法律によって伐採が制限されたため, 近年はモパネの幹を建材として利用することが困難になっている。しかし, モパネが減少する一方で, 本地域では人々が食料として利用してきた野生のヤシ (Hyphaene petersiana) が次第に増加し, 本来の分布域であった洪水の流路周辺から村全体に拡散していった。そして, 近年ではそのヤシの葉柄を建材として利用する世帯が増加し, 新しい住居様式として定着しつつある。このような住居は多量のヤシの葉柄が必要となるが, ヤシの個体数の増加によって葉柄を十分に調達することが可能となり, また葉柄は樹木の「利子」の部分に相当するため, 持続的な資源利用が可能となっている。

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