アフリカ研究
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カメルーン南部熱帯多雨林における“純粋”な狩猟採集生活
小乾季における狩猟採集民 Baka の20日間の調査
佐藤 弘明川村 協平稲井 啓之山内 太郎
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2006 年 2006 巻 69 号 p. 1-14

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抄録

熱帯多雨林において人類は農作物への依存なしに生存することは難しい, といういわゆる Wild Yam Question を検証するために, 2003年8月, カメルーン南部においてピグミー系狩猟採集民 Baka の6家族 (成人男女各6名と子ども4名) の協力を得て, 森の野生食物だけで生活する連続20日間の“純粋”な狩猟採集生活を観察した。調査期間中, 協力者のほとんどは体重を減少させず, 健康面にも障害を起こすことはなかった。調査期間中に協力者によって獲得された食物の含有エネルギーは, 比較的小柄な協力者たちの食料としては十分と思われる1日1人あたり2732キロカロリーと推定された。その53パーセントを野生ヤマノイモが, 26パーセントを獣肉類が, 13パーセントをナッツ類が占めていた。調査期間を通して, 野生ヤマノイモの採集量に変化は見られず, 採集圧の証拠は見出せなかった。他の食物も後半に増えたナッツ類以外調査期間の前後半で採捕量に有意な差はなかった。1日の平均歩数とキャンプ外出時間から見た食物エネルギーの採捕コストに関しては, 調査期間の前後半で有意な差はなかった。今回の観察からは, 熱帯多雨林における狩猟採集生活が困難であるという証拠は得られなかった。

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