アフリカ研究
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人間安全保障概念の再検討とアフリカ研究
佐藤 誠
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2007 年 2007 巻 71 号 p. 101-106

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抄録

アフリカにおける人間の安全保障研究が提起している第一の論点は,人間の安全保障概念の再検討である。そこでは,「人間」を個人に限定せずにコミュニティで生きる者として捉える視点,さらに個人やコミュニティごとに安全が不平等である現実を認識することが必要である。また人間中心主義ではなく,他の生命体と共生する安全保障でなければならない。第二の論点は,人間安全保障と国家(国民)安全保障との関連である。国家から国民の安全を守るだけでなく,国家の正統性を再構築し国家に国民の安全を守らせる課題が不可欠であることを,アフリカの現実は示している。第三の論点は,「欠乏からの自由」と「恐怖からの自由」およびダウンサイド・リスクへの対処という考え方に関わっている。アフリカにおける人間の安全保障研究は,大半が「欠乏からの自由」に集中している。だが,「恐怖からの自由」に対する侵害に目を瞑ったまま「欠乏からの自由」すなわち開発に集中するだけでは,アフリカの現実に向き合ったことにならない。ダウンサイド・リスクは重要な提起だが,公共領域の責任を問わずに私的な対応でリスクに対処させる方向性も秘めている。欠乏のみならず恐怖の現実にどうむきあうか,そこに一つの課題がある。

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© 日本アフリカ学会
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