アフリカ研究
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ニジェール共和国における都市の生ゴミを利用した砂漠化防止対策と人間の安全保障―現地調査にもとづく地域貢献への模索―
大山 修一
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2007 年 2007 巻 71 号 p. 85-99

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抄録

ニジェール共和国では,砂漠化(土地荒廃)の問題が深刻である。砂漠化の進行にともなって,農業生産の低迷や国民の生活レベルの低下,貧困の蔓延,国家財政の破綻が懸念され,多くの地域で人びとの生命や生活が脅かされている。本稿では,ニジェール中南部に居住するハウサの農耕民がもつ砂漠化に対する環境認識と荒廃地の緑化に関する生態的知識を明らかにすることによって,砂漠化問題の原因に関する試論を提示し,砂漠化問題の解決と「人間の安全保障」に貢献する筆者の試みを紹介する。ハウサ農村での住み込み調査の結果から,ハウサの人びとは屋敷地から畑ヘゴミを運搬し,荒廃地の土壌肥沃度と植物生産力の改善を図っていることが明らかとなった。しかし,聞き取りの結果,市場経済化にともなって農村における経済活動が活発になり,人びとが積極的に農・畜産物を定期市へ販売することによって,農村社会の内部で循環する有機物が減少している現状が浮かびあがってきた。一方,首都ニアメでは人口が急増し,住民は大量の農・畜産物を消費し,都市内部にゴミを廃棄しつづける結果,不衛生な状態を作りだし,雨季にはコレラやチフスなどの感染症が蔓延している。農村地域では有機物量が減少し,土地生産力が低下するという砂漠化が顕在化する一方で,都市域ではゴミとして有機物が蓄積し,不衛生な状態を招くというアンバランスな状況が生まれている。筆者は,ニジェールにNGO「OLDCS-shara(砂漠化防止と都市衛生改善プロジェクト)」を創設し,分別した都市の生ゴミを農村域の荒廃地に散布するという計画を立案している。農村における自給食料の確保(「食料の欠乏からの自由」),都市における衛生問題の改善(「感染症に対する恐怖からの自由」)をめざすことによって,「人間の安全保障」に貢献したいと考えている。

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