2024 年 15 巻 p. 69-80
本研究の目的は、コートジボワールにおける子どもの自己効力感の形成要因を、学校教育と徒弟制に焦点化して明らかにすることである。約6週間にわたる現地調査から、学校教育の文脈では、初等教育における児童-教師間インタラクションが自己効力感の形成に寄与していることが示唆された。また、長期休暇中のインフォーマルセクターにおける徒弟制では、学校教育から周縁化された一人の少年の親方との関わりや日々の作業の様子を描き出し、複数の事例から自己効力感が形成される要因を示した。そして、コートジボワールにおける教育の質を非認知能力の視点から検討し、教室に内在する重層的な教育の質の格差と学習面で困難を抱えた子どもが学校教育の制度的枠組みの中で排除されていることを指摘した。しかし一方で、そのような子どもたちは、学校外の空間においても排除され続けるわけではなく、認知的・非認知的な能力の形成という視点から見た教育の質が、学校教育と徒弟制の間で相互に補完された社会に包摂されている。