アフリカレポート
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論考
南アフリカ、マリカナ鉱山の悲劇から1年
佐藤 千鶴子
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2013 年 51 巻 p. 79-91

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抄録

2012年8月、ストライキに参加した34人の鉱山労働者が警察の発砲によって死亡した南アフリカ、マリカナ(Marikana)鉱山での悲劇的事件から1年以上が経過した。マリカナ事件は南アフリカ国内外に大きなショックを引き起こし、民主化によって誕生したアフリカ民族会議(African National Congress: ANC)政権が黒人労働者を無慈悲に虐殺した事件として、アパルトヘイト時代の民衆抵抗に対する警察による暴力的弾圧に匹敵するような出来事として語られることになった。

本稿では、マリカナ事件を導いた鉱山労働者のストライキについて事実関係を振り返った上で、なぜこの悲劇が起こったのかを明らかにするためにズマ大統領が設置したマリカナ調査委員会(通称ファラム委員会)による調査の進捗状況について検討する。さらに、同ストライキが山猫ストであったことに注目し、労働者主導のストライキが増加した原因として指摘される鉱業部門の労使交渉をめぐる制度的問題とマリカナ事件が浮き彫りにした南アフリカ社会の課題について考察する。

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© 2013 日本貿易振興機構アジア経済研究所
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