アフリカレポート
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資料紹介
小川 了 著 『第一次大戦と西アフリカ――フランスに命を捧げた黒人部隊「セネガル歩兵」――』 東京 刀水書房 2015年 xiv+378p.
佐藤 章
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2015 年 53 巻 p. 72

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本書は、著者が2014年に発表した非売品の書籍『ジャーニュとヴァンヴォ――第一次大戦時、西アフリカ植民地兵起用をめぐる二人のフランス人――』(アジア・アフリカ言語文化研究所)を新たに商業出版物として刊行したものである。基本的な内容を前著から引き継ぎつつ、標題の変更、章順の組み替え、補遺の加筆などがなされた改訂版として位置づけられる。植民地期のアフリカについて一書を使って論じた日本語の本は多くはなく、フランス語圏アフリカともなればなおさら情報が乏しいのが現状である。本書の刊行は日本のアフリカ研究に新たな足跡を記す大きな出来事といえる。

本書は、第一次大戦という初めての総力戦に突入したフランスが、折しも西アフリカに建設していた広大な植民地を戦時動員に巻き込んでいった過程に注目する。焦点は西アフリカ各地から徴発され戦場へ投入されたアフリカ人兵士たちに置かれ、その動員に関わった2人のフランス人――強硬な徴発策に反対してフランス領西アフリカ連邦総督の職を辞し戦場で命を落としたヴォレノーヴェンと、西アフリカ出身の黒人で初めてフランス国民議会の議員となり大規模なアフリカ兵の動員を実現したジャーニュ――の生涯を通して詳しい記述と分析が進められる。公文書資料(おそらく本邦初紹介のものも多いだろう)や第一次大戦時の軍人の著作などからの長めの引用が効果的に盛り込まれ、読みごたえがある。フランスが西アフリカへ進出した過程や統治機構に関しても要点が簡潔にまとめられており、フランスによる西アフリカの植民地化について多くを学ぶことができるのも魅力である。

人類学者としてフィールドワークに基づく研究を積み重ねてこられた著者小川さんは、本書以前にも『奴隷商人ソニエ――18世紀フランスの奴隷交易とアフリカ社会――』(山川出版社、2002年)を発表している。フィールドであるセネガルを長いあいだ見つめる過程で発展してきた関心を歴史的に掘り下げ、研究分野にとらわれずに具体化させようとする姿勢は本書でも貫徹している。本書でなにより印象的なのは、資料や先行研究では必ずしも情報を得られない事柄について、大胆に推論を重ねて小気味のよい筆致でぐいぐいと論を進めていく文体である。自分の関心に忠実に考察を重ね、成果をありのままに提示してくれる、その清々しさに触発される。

佐藤 章(さとう・あきら/アジア経済研究所)

 
© 2015 日本貿易振興機構アジア経済研究所
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