アフリカレポート
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島田 周平 著 『物語 ナイジェリアの歴史――「アフリカの巨人」の実像――』 中央公論新社 2019年 274 p.
岸 真由美
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2020 年 58 巻 p. 20

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アフリカ大陸の西部に位置するナイジェリアは、約1億9600万人の、大陸では最大、世界でも7位の人口を有する国である。石油輸出国機構(OPEC)に加盟する産油国であり、経済的にも国内総生産(2018年、3973億米ドル)はアフリカで第一位を誇る。アフリカの大国であるにもかかわらず、この国の知名度や認知度は日本では決して高くない。

しかし著者によれば、ナイジェリアはアフリカ大陸全体の発展を考えるうえで要となる国である。歴史家トインビーが指摘したサハラ砂漠南縁を境にアフリカ大陸を南北に分かつ線――この分割線を挟み北のアラブ主義(イスラム地域)と南のネグロ主義(非イスラム地域)は対立の問題を孕んでおり、2011年にスーダンから南部が独立して南スーダン共和国となった今、ナイジェリアはこの分割線を跨ぐ唯一の国である。この分割線をめぐるナイジェリアの国内問題は今後のアフリカのありように大きな影響を与える可能性がある、と著者は言う。

本書はそうしたナイジェリアの歴史を描いたものだ。ただし、ナイジェリア誕生以前のサハラ交易時代から本書の叙述は始まる。長い歴史がこの国の地方の特性を形作っているからだ。サハラ交易とともに西アフリカの内陸部にはイスラムが伝播した。15世紀以降の大西洋貿易とヨーロッパ人の探検や宣教によって沿岸部にはキリスト教が普及した。ナイジェリアでも北部はイスラム教徒が、南部はキリスト教徒が多い。250以上の民族が存在するが、北部はフラニ人とハウサ人、南部ではニジェール川西部がヨルバ人、東部はイボ人が多数派を占める。イギリスは植民地支配の初期には保護領を北部と南部に分けて統治していたが、のちにこれらの地域を一つにまとめ、それが現在のナイジェリアの原型となった。しかし、民族的・歴史的にも異なる背景を持つ地域をひとつにしたことは、独立直後のビアフラ内戦の要因にもなり、地域政府が大きな自治権を持つ独特な連邦制の成立にも影響を与えている。

著者は本書でナイジェリアの地域の多様性を一国の歴史に織り込むため、できるだけ地方の歴史を取り上げたと言う。そのため本書は情報量が極めて多い。一読では把握しきれない部分もあるだろうが、内容はとても整理されている。幾度か読むうちに世界史の流れのなかでの西アフリカとナイジェリアの歴史がよくわかるようになる。

岸 真由美(きし・まゆみ/アジア経済研究所)

 
© 2020 日本貿易振興機構アジア経済研究所
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