アフリカレポート
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資料紹介
紀谷 昌彦 ・ 山形 辰史 著 『私たちが国際協力する理由――人道と国益の向こう側――』 東京 日本評論社 2019年 207+xiii p.
児玉 由佳
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2020 年 58 巻 p. 26

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本書は、なぜ発展途上国への国際協力を行うのかという、国際協力に対するいわば根本的な問いについて正面から取り組んでいる。外交官である紀谷と大学教員の山形が、それぞれの立ち位置から国際協力と国益との関係について交互に論じるというユニークな構成をとっている。国際協力は必要であるという一点において2人の意見は一致しているが、議論は最終的に収束することはない。しかし本書は、2人の主張を通して、国際協力の多面的な性格を明らかにするのとともに、国際協力に関する議論を理解するための重要な手がかりとなっている。

第1章では山形が、開発援助と国益との関係について問題提起をしている。開発援助は、二国間や多国間援助のような国単位で行われるものが中心であり、「国」の意向に影響をうける。2003年に閣議決定されたODA大綱が日本の国益に言及したことをとりあげ、日本の開発援助の方針転換の可能性に言及している。第2章では、第1章の「開発援助に何を託すのか」という問いに応える形で、紀谷が、開発途上国の抱える問題を提示する。そして「外交」としての日本の開発援助について、日本が技術協力を開始した1954年から現在に至るまでの変遷を紹介している。第3章は再び山形が担当し、2015年に国連総会で採択された「持続可能な開発目標」(SDGs)の概要を紹介したのち、開発途上国における開発政策の変遷を分析している。そしてこの変遷のなかにSDGsを位置づけ、その課題を指摘している。特に日本のSDGsの方針が自国内での改善を重視した内向き志向であることを批判している。第4章では、山形の指摘に応える形で紀谷がSDGsについて別の見方を示すとともに、日本の開発援助は必ずしも内向きではなく、「つよみ」を生かして発展途上国とのパートナーシップを構築しようとしていることを主張している。この章では、いくつかの事例が挙げられているが、南スーダンにおける平和構築やアフリカ開発会議(TICAD)における官民連携など、アフリカにおける日本の国際協力も取り上げられている。

平易な文章で書かれていながら、国際協力と国益との関係についての重要な論点が提示されている。このような議論の背景にあるさまざまな先行研究についても目配りされており、巻末の参考文献リストを活用することでさらに知識を深めることができる。本書は国際協力に興味のある学生にぜひ推薦したい。

児玉 由佳(こだま・ゆか/アジア経済研究所)

 
© 2020 日本貿易振興機構アジア経済研究所
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