2016 年 41 巻 p. 5-20
この論文では、未婚化社会における被差別部落の青年たちの恋愛・結婚の現状について考察する。
まず、議論の前提として、部落出身者の定義の問題について述べた。次に、部落出身者に対する結婚差別の状況について述べた。日本社会が、見合い婚から恋愛婚に変化したことによって、結婚差別の状況も変化した。
そして、「未婚化社会」における部落青年たちの恋愛・結婚について論じた。部落青年の結婚に関する最大の悩みは、全国の青年とまったく同じで、適当な相手にめぐり会わないことである。だが、差別に対する不安もある。恋愛関係において、つきあったり別れたりを繰り返すことができる現在、相手の心変わりの理由は無数にあり、別れの理由が部落差別かそうでないのかを見分けることは難しくなった。これを「恋愛差別」と名付けた。
また、部落青年が結婚できないのは、日本社会の未婚化の影響なのか、差別のせいなのか、就職や学力の不利が間接的に影響を与えているのか、理由を断定することは難しい。結婚できないことを、本人の責任にされてしまいかねない状況がある。
最後に、未婚化社会における結婚・恋愛差別への対処について、考察をおこなった。