2020 年 45 巻 p. 7-25
日本で若者の生活基盤が脆弱になっていることが認識されたのは西洋諸国より大幅に遅く、21世紀に入ってからであった。経済基盤の脆弱化および非婚者の増加が親子関係の長期化をもたらし、親との同居は中年期まで続く現象となった。親子関係は多様性を帯びているが、それは自由度の拡大とリスクの拡大の2 面性をもっている。そこで、就業形態、ジェンダー、地域等によるコーホート内の格差に焦点をあて、中期親子関係が内包するリスクの実態を明らかにする。日本で若者政策が登場したのは2000年代に入ってからであるが、若者の生活保障に関する国家の責任が不明確であるために、自力で生計を立てることのできない若者は、親同居未婚者として親の家で暮らすか、不安定でリスキーな未婚単独生活者として生きる結果となっている。若者の社会格差が親の格差の影響を強く受け、中期親子関係に影響を及ぼしているのは若者政策を含む社会政策がもたらしたものといえるだろう。