2020 年 45 巻 p. 79-96
本稿では、新聞紙上の人生相談欄の記事を題材として、自分の婚外での性愛についての相談とそれへの回答がどのように成し遂げられるのかの例証を試みる。相談者は自身を非難したり、自らの感情やふるまいを自由意志を欠くものとして記述したり、「正しさ」を欠いた結婚生活に替えて、より「正しい」結婚生活を始めることができないという「道徳的な悩み」を語ったりすることで、悩みの相談を相談とそれに応じた助言に値するものとして編成する。回答においては、ほとんどの場合、婚外での関係の解消と新しい結婚生活のいずれが是とされるかは二者択一で、婚外での関係と現在の結婚生活の「両立」を認める回答は数のうえで例外的であるのみならず、回答者によって例外として構成されたりもする。これらの意味で、結婚と性愛を結びつける規範からの逸脱である自分の婚外での性愛についての相談とその回答は、その理解可能性を当の規範によって支えられている。