2020 年 45 巻 p. 61-78
本稿では夫が家事を分担している家庭であっても生じる家事分担の困難の存在とそれに対する対処を、“sentient activity” 概念を手がかりに「家事のマネジメント」の視点から明らかにした。子育て期の共働き夫婦へのインタビュー調査の結果、次の知見が得られた。まず、夫婦共に家事をしていてもその基準が異なること、および家事をするうえでの思考や感覚が共有しにくいことから家事分担の困難が生じる。そしてそれらへの対処として、妻が感情労働などの新たなマネジメントを行い、家事責任を引き受ける様子が確認された。他方、夫に家事を任せていた妻の特徴として、(1)家事のマネジメント負担を認識していたこと、(2)自分の家事規範を相対化し、夫を家事運営主体として尊重していたことがあった。