抄録
これまでの家庭教育研究は、学習面やしつけの社会階層による違いに注目してきたが、そこで子どもの家事が検討されることはほとんどなかった。自立や人格形成、ジェンダー意識の観点から分析されてきた子どもの家事について、本稿では子どもに家事を教えるという行為と併せて検討し、既存の家庭教育研究との接続を試みる。近年の大規模親子パネル調査データでは子どもの家事の詳細な分析が可能となり、今回は家事頻度や母親が家事を教える頻度を学校段階・性別・学歴・社会階層の観点から分析した。既存の家庭教育で指摘されてきた高学歴で教育熱心な親は、必ずしも家事を教えることにも熱心ではなく、複雑なメカニズムの存在が示唆される。最後に、子どもを補助的な役割に留めかねない「お手伝い」という表現を超えて、社会学において蓄積のある家庭教育や家事分担研究に、子どもの家事という視点からのさらなる議論の展開を提案する。