1998 年 52 巻 4 号 p. 262-274
1994年9月15日,琵琶湖において観測史上最大の渇水値である-123cmを記録し,琵琶湖東岸の新海浜沖の水面上にバーが出現した.調査地点では,ビーチに平行な4列のバーが確認でき最も沖合いに出現した第4列目のバーについて内部堆積相の解析を行いその形成過程を明らかにした.バー内部は,境界面b-fで区切られるユニットA-Eに分けることができ,各ユニットはビーチにおけるバーム,バームクレスト,ビーチフェイスに相当する形態的特徴を有している.さらにユニットB-Eは,ユニットAを基にして順次沖側(前進)付加するとともに,上方(積み上げ)付加の堆積作用により形成されたことを示している.これらのユニットA-Eは湖水位の低下とともに形成された堆積体であり, "卓越風"による沖側からスウォッシュする寄せ波により順次付加堆積したものと考えられる.特に,ユニットAとBの境界面bは,水位の低下に伴い平坦化された再活動面と解釈でき,その形成日時を特定し,バーを構成する各ユニットの具体的な日変化過程を明らかにした.また,より岸側に位置する第3列目のバーは,岸側付加堆積の特徴を示すとともに,一般に砂浜海岸で形成されるリッジーランネルの形態的特徴を有している.これらの事実は,第3列目のバーの形成過程が明らかに異なることを示している.