地球科学
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尾小屋鉱山におけるCuとFeの微生物による固定
岸上 佳史桜山 和美田崎 和江上島 雅人渡辺 弘明
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1999 年 53 巻 1 号 p. 19-28

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抄録

尾小屋鉱山は緑色凝灰岩中にできた裂罅充填型浅熱水性の銅鉱床である.1971年に閉山するまで,当鉱山では黄鉄鉱,黄銅鉱,方鉛鉱,閃亜鉛鉱を産出していた.重金属は捨てられた鉱石から溶出し,河川へと流出している.石川県の尾小屋鉱山地域では,Fe,Cu,Zn,Cdがズリ捨て場から梯川へ流入している.本鉱山では,様々な色のバイオマットが第六立坑周辺に形成している.緑色のバイオマットに覆われている大量の茶色のバイオマットが坑口から続く谷川の河床に重金属を堆積している.これらのバイオマットは光学顕微鏡および走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察を行った.また,バイオマットの鉱物および元素組成はX線粉末回折分析装置(XRD),蛍光X線分析装置(XRF)およびエネルギー分散分析装置(EDX)で分析を行った.坑水に含まれている主な重金属は,Fe(26.85mg/l),Cu(3.97mg/l),Zn(23.94mg/l),Cd(0.09mg/l)である.Fe,Zn,Cuやその他の金属が溶存している坑水中から,ピンク色バイオマットは銅を選択的に濃集し,また深緑色のバイオマットはFeを濃集している.ピンク色バイオマット中には自然銅,赤銅鉱,石英が存在していた.また,茶色のバイオマットはFeを選択的に濃集し,針鉄鉱やマグヘマイトといった鉱物を形成していた.バクテリアや藻類などの微生物はFeやCuといった重金属を細胞に吸着および濃集し生体鉱物を作ることが明らかになったので報告する.

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© 1999 地学団体研究会
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