地球科学
Online ISSN : 2189-7212
Print ISSN : 0366-6611
水酸化鉄を主成分とするバイオマットの初期形成について
田代 陽子田崎 和江
著者情報
ジャーナル オープンアクセス

1999 年 53 巻 1 号 p. 29-37

詳細
抄録

角間川や金沢大学調整池ではLeptothrix sp., Gallionella sp.やToxothrix sp.といった鉄酸化細菌や,桿菌,球菌によって形成されている黄褐色のバイオマットがみられる.本研究では現地での付着実験を行い,バイオマット形成の初期段階に着目し,主に透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察,分析を行った.その結果,Toxothrix sp.の粘着物質(polysaccharides)が,水酸化鉄の微粒子を積極的に細胞壁に付着させる役割を担っていることが明らかになった.polysaccharidesのようなToxothrix sp.の粘着物質は,Fe^<2+>をFe^<3+>に換えてエネルギーを得る鉄酸化細菌のバイオミネラリゼーションによって生成された水酸化鉄が拡散するのを防ぎ,200nmのコロイド状微粒子として取り囲んだ状態で凝集させる.凝集した水酸化鉄のコロイド粒子はpolysaccharidesの薄膜から押し出された後もそれ自体で集合体を形成する.polysaccharidesは,水酸化鉄を固定し,その大きさを支配しながら鉄物質を固体にして堆積する役割を担っていることが示唆される.このような水酸化鉄の凝集形態は,バイオマットの厚みを増す要因である.

著者関連情報
© 1999 地学団体研究会
前の記事 次の記事
feedback
Top