地球科学
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合成紅簾石のMn3+含有量と結晶構造変化 ―X線粉末リートベルト解析の有効性―(<特集>鉱物学,ミクロからグローバルを探る(その1))
永嶌 真理子赤坂 正秀
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ジャーナル オープンアクセス

2005 年 59 巻 1 号 p. 49-56

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抄録

天然の置換型固溶体鉱物では,1つのサイトであるいは複数のサイトにまたがって多種のイオン置換が起こっている場合には,着目したイオン置換の結晶構造に対する影響を評価することは困難である.そこで単純な系の固溶体鉱物を合成して構造解析を行う必要がある.しかし合成実験では粉末試料は得られても単結晶構造解析を行うための結晶を得ることが困難な場合が多い.このときリートベルト法によってX線粉末回折パターンから結晶構造解析を行うことができる.その例として,著者らが行った合成紅簾石におけるリートベルト解析の方法と結果の一部を紹介する.著者らはCa_2Al_<3-p>Mn^<3+> Si_3O_<12>(OH)紅簾石を200-350MPa,500℃で合成し,X線リートベルト解析を行った.その結果,以下のことがわかった:(1)本実験で合成した紅簾石の最大Mn^<3+>含有量は1.3 a.p.f.u.である,(2)6配位席のMn^<3+>占有率はM3>M1>>M2であり,M3, M1サイトにおけるMn^<3+>占有率(g)はg^<M3>=0.20p^2+1.00p,g^<M1>=0.23p^2-0.06pと表される,(3) Mn^<3+>含有量に対するa軸とc軸の非直線的変化はM1-O1原子間距離とO5-Si3-O6結合角に依存する,(4) Mn^<3+>含有量の増加に伴いM3, M1サイトの八面体席はヤン・テラー効果によって正方晶系的に圧縮された形に変形する.

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© 2005 地学団体研究会
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